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ニューギニア戦線を生き延びた造形美術家、三橋國民の世界



《戦争は、若者達の掛け替えのない生涯を消し去りました……当時、若者達は悉く召集され、下級兵士として最前線へ送られましたが、「ひたすら国の為とだけ信じて戦い、土くれと化した」のです。》
 「三橋國民―鎮魂70年目の夏」展にあたりこう述べるのは日展参与、東京都名誉都民の造形美術家で94歳の今も制作を続ける三橋國民氏だ。町田市立博物館で7月14日から始まった同展を観覧してきた。そこにあるのは太平洋戦争末期にニューギニアで地獄を経験してきた人間の、痛切な怒りと悲しみの発露だった。
三橋國民氏は1920年、東京府南多摩郡町田村(現在の東京都町田市)に生まれた。21歳で高射砲第二連隊に入隊するが病気のために除隊、一橋大学に入学して束の間安堵するも、文系だったため学徒出陣によりニューギニアに出征した。

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体重90キロの兵士が飢餓により35キロになった様を二曲屏風に描いた「飢餓兵士像」(1999年)。骨と筋だけになったその手に握られた飯盒が悲惨を強く感じさせる。

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手前は「地蔵菩薩尊像」(1980年)。これがお地蔵さま? と奇異に思われるかもしれない。が、荒削りに熔断された鉄板に浮かび上がるひびは、死と隣りあわせを毎日過ごし、同輩が何十人も斃れていった彼にとっての救いの地蔵菩薩だったのだろう。

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身の毛もよだつような絵だ。敵機の空襲を受け、頭蓋骨が吹き飛んでしまった兵隊を描いた、「爆裂図」(2014年)90歳を超えてもこのような激しい表現を貫いたことに、戦争体験の苦しさと怒りが伝わる。

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この「忘れじのニューギニア」(2006年)はまさに何の説明も要らないだろう。死んだ戦友たちの骨が叫んでいる。生きて帰ってきた作者に。そして平和を生きる我々に、もう二度と繰り返すな、決して忘れるなと……

三橋氏は曹洞宗大本山永平寺の道元禅師像など多くの仏教系美術を創った作家でもあり、本展でも釈迦如来の仏画などを拝観できる。幅広い作風を持つが、いずれもそこにはどこかやはり深い宗教的な祈りが通底している気がする。

先頃、NHK出版から出た『兵隊蟻の五〇〇〇キロ―鎮魂遙かなるニューギニア』も一読を薦めたい。兵隊蟻とは、ニューギニアの大地で行進する葉切り蟻を見て、タナカという戦友が言った《俺たちは『人殺し専門の兵隊蟻』なんだから》という言葉に基づく。

嘘つきで尊大で食糧を誤魔化す無能な上官への怨み(70年経ってもそういうものは消えない!)や、戦友の土饅頭に供えられたたった5粒の乾パンを盗んだ台湾の少年・高砂義勇隊員への同情。死の淵で見た母の顔の幻影などが、あまりに重い。反軍国的思想の兵士が、死に直面して手帖に書き付けた「神州不滅・八紘一宇・天皇陛下万歳。死して護国の神とならん」という「軍神じみた常套語」。そしてその裏表紙に書かれた本音――70年後の平和を生きる我々に投げかけるものは多い。

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「鎮魂70年目の夏」展の会期は8月30日まで。無料、月曜休館。町田市立博物館(町田市本町田3562、小田急玉川学園駅から徒歩約20分)

なお三橋氏のインタビューがNHKの戦争証言アーカイブスに収録されている。特に台湾高砂義勇隊の記憶を語っている。これも重要な記録であろう。

カテゴリ: 歴史
2015年07月15日 01時25分45秒 Posted by きしもとげん ( 5,157 PV ) 勢い:7


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