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メーカーの中の人が語るなぜ電気・精密機器メーカーは危機的状態なのか 第3回 末端の技術者はどう思っているの?



Gagazine読者の諸兄こんにちは

なかなか更新できなくて申し訳ない。
私自身転職活動中のため、なかなか執筆に時間が取れていない。

今回は末端の技術者に焦点を当てて書いてみる。

メーカーの技術者にもいろいろな仕事があり、
  ソフト系/ハード系
  B2C系/B2B系
  SE/開発者/研究者
  既存事業/新規事業

などいろいろな区分けがあり一概には言えない。

私はソフト系をやっていたので、
その辺りを中心に説明したい。
今回はB2C、B2Bというくくりで説明してみる。
・B2C系ってどうなの

B2C系の若い技術者たちは概ねモチベーションが高い。
自分が関わった商品がヤマダ電機で並んでいるのを見ることができるという特権がある。

日本のB2C向け商品は基本的には半年、四半期に1度モデルチェンジを行う。
新商品として出た瞬間は価格が定価まで戻るが、その後徐々に下がっていく。
このように大した機能追加がなくても、新モデルを出すことで価格を維持することができる。
このよくわからない現象のため、
メーカーは短期にたいして変わらない新モデルを次々出すことを強いられている。

たいして変わっていないと行っても変わっている部分はあるわけで、
過去に作った99%の部分との不整合があっては困る。
そのため多くの開発工数を不具合のテストに割いている。

もちろんモデルが大きく変わる時もあり、その開発に携われればラッキーだが、
そうでない場合は、いかに過去の遺産を傷つけないかを問われることになる。
そのため、前時代的な厳しい戒律が存在し、プログラムを1行直すだけで数週間、審査承認に時間がかかったりする。

一方、インターネット系を生業にしている企業は、新しい開発手法を使っているため、
過去のプログラムを多少直したとしてもシステム全体が狂ってしまったりすることはない。
しかし、大手メーカーは秘伝のタレのような古くから継ぎ足し継ぎ足し使ってきたプログラムがあり、
ちょっと変えると全体に影響が出たりする。
また、偉い人はハードウェアの基礎を作って出世した人たちが多く、若手が最新のソフトウェア開発手法を提案しても
基本的には聞き入れられない。
若いうちはモチベーションの高かった技術者も、
このようなプロジェクトを繰り返すうちに疑問を抱くようになる。
また四半期に一度リリースをしていては必然的に長時間残業も多くなる。
特にB2Cは不採算部門であることが多く、大掛かりな投資は行われないし、
いつ事業部ごと売りに出されてもおかしくない。
そのため中堅ぐらいになるとかなりモチベーションが下がってきて他の部署に移動する人も少なくない。

まとめるとB2Cの技術者は時間のほとんどを昔作ったものを守るために使っており、
新しい価値はほとんど創造していない。
また、半年に一度モデルチェンジするという時代遅れの売り方、ちょっと直すと全体が狂う時代遅れの作り方から脱却できていない。
しかし経営側がそれを改革するために投資するというのも考えにくい、そんな八方塞がりな状況である。

・じゃあB2B系は?

B2Bも基本的には開発体制は変わらない。
昔にハードウェアを根性で作った人をトップとする階層構造で、
過去に築いてきたものを守るための厳しい戒律が存在する。

ただし、利益に貢献している稼ぎ頭なのでそういう意味で若手のモチベーションは低くない。
また、半期に一度モデルチェンジするライフサイクルではないため、恒常的な長時間残業がある部署は少ない。
一方で、B2Cと異なり一般の人が使うものでないため、
なぜそれを作る必要があるのか分からずに作っていることも多い。
メーカーの社員は、新入社員から同じ会社に努めていることが多く、
特に採算の取れている部門にいれば基本的に危機感を感じず、転職することは少ない。
また社外で勉強することもあまりしない。

このため、ビジネスのことはほとんどわからない人が多く、
お客さんに言われたことをそのまま営業が聞き、
営業の持ってきた話を企画者が取捨選択し、
技術者がそのまま作るというような構図になっている。

よって、お客さんも気づかないようなビジネスチャンスを広げてくれるような商品は基本的には作られず、
過去に作ったものの改善しかなされない。
そのため、価格が徐々に下がっていき、真綿で首を絞められている状態である。

また、B2B系においては作っても営業が売ってくれないという悩みが存在する。
法人向け営業は相手の偉い人を口説き落とす提案をしなければならず、
頭を使う仕事である。メーカーにはそこまで頭を使える営業は少数であり、
仮にいいものだったとしても売ってもらえないことは多い。

当然、売り方を説明できない技術者にも問題がある。
営業からしたら、どんな業界のどんな役職に、どんな価値があるから、いくらで売れる
というような説明がなければ売ることができないのは道理である。
しかし、先述のように開発者はビジネスに疎く、特に価値の無いものを作ってしまったり、
うまく説明できずに商品化されないことも多いのである。

以上のように最初はモチベーションを持っていた若手技術者も、
提案しても商品化されない経験を何度も重ねるうちに、
厳しい戒律に従って正しく業務をすることを覚え、
モチベーションのない中堅サラリーマンになっていくことになる。
そしてB2Bにおいても新しい価値はほとんど創造されない。
技術者は、戒律を守って昔作ったものを守る仕事をして利益に貢献するか、
利益への貢献は諦めて新しい価値に挑戦するか2択を迫られている。

・まとめると

まとめるとB2BでもB2Cでも技術者はほとんど新しい価値を生み出せていない。
またそのことは技術者が一番良くわかっており、近年モチベーションの低下も深刻になってきた。
優秀な技術人材を競争力の源泉とする日本においてこれは危険な事態だと思う。

しかしそれは、メーカーが長年培ってきた、組織構造だったり開発手法だったり、
人事制度だったり、社員個人のスキルセットであったりというところに根を下ろしている根本的な問題である。

また前回述べたように世界経済の先行きが厳しいことも影響している。
お客さんである個人や会社が儲かっておらず、そのため新しい価値が提示されても魅力を感じず、
自ずと新しい価値が作られず、結局会社は儲からないというループがあるからだ。


しかし、B2Bについてはまだやり方はあるのではないかとも思うのだ。
読者諸兄の会社の社内システムやハードウェアは完璧だろうか、そんなことはないはずである。
お客さんと優秀な社員の理解が深まり、信頼関係を築く事ができれば、
お客さんのところの従業員も経営者も幸せになるB2Bソリューションができると思うのだ。


と言いつつ、メーカーの抱えている問題はこれだけでもない。
次回は、新規事業、既存事業という視点で語ってみたいと思う。


※新規事業について書きたかったのですが専門的になりすぎるため、
最期に回してまずは技術的な視点で書きました。
第四回へ

カテゴリ: コラム
2016年01月24日 17時09分08秒 Posted by neko_ug ( 7,432 PV ) 勢い:18


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コメント(リンクの記載「http://」は行えません)
1 名前:名無し@ガガリアン 2016/01/24(日)23:43:39. ID: 6b737ba3p
毎度面白かった
>Gagajin読者の諸兄こんにちは
gagazineだ
2 名前:名無し@ガガリアン 2016/01/24(日)23:44:41. ID: 3a2a5cc2p
前回の記事の内容を早速受け売りで人に語ってソンケイされました! 
3 名前:neko_ug 2016/01/25(月)00:16:24. ID: b1694d46p
>gagazineだ

しまった。直しておきます
4 名前:名無し@ガガリアン 2016/01/25(月)23:19:10. ID: 2b7b03c5p
人間いくつになってもチャレンジする時はモチベ上がるけど
大抵若い人ほどモチベ向上率も高いよね
日本のメーカーは若手社員のやる気の使い方が下手過ぎですわ
5 名前:neko_ug 2016/01/26(火)00:35:08. ID: 32105183p
そうですね。
人間一番モチベーションが上がるのが、世の中に貢献している時だと思います。更に管理管理いう上司がいなければ若手のポテンシャルは10倍にも100倍にもなると思います。(会社の人事制度にはまらない動きをしてしまうのでグレーなこともしてしまうのですが)
6 名前:名無し@ガガリアン 2016/01/30(土)09:43:39. ID: ec29e17bp
本日3回一気読み。
おもしろかったです。
メーカーではないのですが、業務改善に頭を悩ましています。
将来来るIOTも見据えて、システムとかどうしようかと情報収集していますが、基本それ程変わらないソフトばかり。
理由はそういう事だったのかと納得しました。
やっぱり買う方が自分で考えなければいけないのですね。
7 名前:neko_ug 2016/01/31(日)22:26:53. ID: c9f103aap
ありがとうございます。
IoTは私も関わっていました。
技術的には格安sim等インターネットに安くつなぐ手段ができ、クラウドを使うことに対するアレルギーもなくなったので、
デバイスのデータを何でも吸い上げてクラウドで集中的に分析して業務に活かそうという感じだと理解しています。
一方、企業で扱っているデータは多種多様な上、
価値のあるデータが何なのかもその企業によって変わりますのでベンダーにおまかせは難しいですね。
8 名前:neko_ug 2016/01/31(日)22:29:18. ID: c9f103aap
(長いので切りました)

IoTで得たデータを活かすには自社で分析をして結果を業務に落とし込める、分析のリテラシーと業務を変える裁量を兼ね備えた社員が必要になります。

日本企業は現場の意見が強く、かなり上の世代まで行かないと業務を変えるほどの裁量がないため、
IoTの活用は欧米各国のようにうまくは行かないかもしれません。